靴
私が初めてアメリカ靴を履いた(手にした)のは、中学生の頃だったと記憶しています。小学校2年生の時に終戦を迎え、街にアメリカの進駐軍がやって来ます。子供ながらにビシッとした服を着用し、足元にはピカピカに光った靴を履いた姿が格好良く、とても印象的で今も目に焼き付いています。
昭和20年代の後半は物の無い時代でしたが、恵まれていたことに「シアーズ・ローバック」のカタログを見ることが出来、親に無理を言ってアメリカからブラックカーフの編み上げブーツを取り寄せてもらったことがあります。今思えば子供ながらに生意気だったと思いますが、吉田橋にあったシューシャインスタンドで、米兵の真似をして何度か磨いてもらったことがあり、そのおかげで靴の磨き方を習得出来たとも思っています。
信濃屋でアルバイトを始めた昭和30年代は日本にまだインポートの靴が少なく、有ったとしてもアメリカ靴くらいで、「フローシャイム」のインペリアルシリーズは、初任給¥16,000の時に¥25,000だったのを今でも憶えています。
自分の持っている靴はヒモ靴(オックスフォード)が殆どですが、何足かあるスリッポンはアメリカ靴が中心です。ヨーロッパの物もありますが履いた時のホールド感はやはり、アメリカ靴には敵わないと思います。革靴との最初の出会いがアメリカ製という事もあるかもしれませんが、近年のヨーロッパ物には無い独特の雰囲気を持った1960年前後の既製靴が、自分の中では完成された逸品だと思っています。
今回 「今月の一着」でご紹介している3足も、当時のアメリカ靴のにおいがする出来ばえとなっています。お時間がございましたら、是非お手にとってご覧下さい。
P.S 最近 靴用語の中で気になる言葉をよく耳にします。日本だけで使われていて、少し気になりましたので書かせてもらいます。
1 つま先のことをトー(TOE)ではなく、トゥー(TWO?)と云っている。 2 靴の幅のことをウィズ(WIDTH)ではなく、ワイズ(WISE?)と云っている。 3 外羽根のモカシンのことをU-TIPと云っている。
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