ノーフォーク・ジャケット(NORFOLK JACKET)
アメリカのスポーツ・ジャケットのルーツ
最初のアメリカ人のスポーツ・ジャケットは、ノーフォーク・ジャケットだといわれ、白いフラノのズボンと小意気なカンカン帽を組合せたノーフォーク・ジャケットは、最も通俗的な行楽地でも通用する夏のスタイルでした。
その起源は、遠く18世紀の英国にさかのぼります。当時、英国ではその居住地域に関連するカントリー・ジャケットを着用するのが男の慣習でした。ノーフォークは、ノーフォーク地方の男たちに着られていたノーフォーク公爵型のハンティング・スーツ(狩猟服)からとったもので初期にはバックベルトではなく、腰全体に回したオールラウンド・ベルトも用いられていました。
その後、アメリカ南部の優雅な避寒地では、膝下を尾錠つきの細帯で留めた替ニッカボッカーとの組合せが大流行し、特にゴルフ場や射撃場では、10人のうち9人までが、このスタイルでした。「スポーツ・ジャケット」とか「スポーツ・コート」という用語がまだ使われていなかった当時の最も裕福なアメリカの男達が、ノーフォーク・スーツと替ニッカボッカーでさまざまな組合せを楽しんでいた様です。
1920年代の中期には、ノーフォーク・ジャケットの流行は上流社会の成人層の間にはもうなくなっていましたが、服装意識の強い大学生はそれがスーツとして同じようにセパレーツのスポーツ・ジャケットとしても着られることを発見していました。いずれにしても、ハリス・ツィードがノーフォークに魅力を加え、ついにスポーツ・ジャケットという考え方で着られるようになり、持ち衣装のひとつとなっていきました。
アイビーリーガーに流行
1930年代には、プリンストン大学のような流行に鋭感な大学のヤング・ファッションの動きを鋭く察知した人達は、ハリス・ツィードのノーフォーク・ジャケットが数は少ないけれど確実な売れ筋になるはずだと注目していました。ニューヘブンの小売業者(J.PRESS)は、最近のどのシーズンよりもノーフォークが売れると考え、このスタイル的特徴がスーツにも替上着にも通用するセールス・ポイントになると注目し、結果的には驚くほどの流行となっていきました。
日本での変遷
日本に目を向けると1960年代からのVANをはじめとするアイビーブームには、秋冬の定番スポーツ・ジャケットとしてMEN’S CLUBなどの雑誌に必ず登場しています。しかし、1975年頃にはノーフォーク・ジャケットを購入する人が少なくなっていきました。けっして人気がなかった訳ではないのですが、ツィードの魅力的な部分より個性的なデザインが着こなしを難しくしていた為です。現在でも一部の愛好家を中心に着られているジャケットとして根強い人気はあります。
信濃屋のノーフォーク・ジャケット
当社でも1990年代後半からオリジナルでハリス・ツィードやコーデュロイを使用したことや春夏には麻素材で作製したことが何度かあります。今回はお客様のご要望もあり、約5年振りにライトウェイトのツィードで提案しました。
参考文献
・スタイル社 エスカイア版20世紀メンズ・ファッション百科辞典 (日本語版)
・婦人画報社 「男の定番辞典」 「別冊 MEN’S CLUB アイビー PART 2」 |