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麻(リネン)の歴史

麻 (LINEN)

麻の歴史

 麻は、人類が繊維を得るために最初に栽培したものの一つで、「人類最古の繊維」とも云われています。 古代エジプトでは、麻を ”Woven Moonlight” (月光で織られた生地)と呼び、広く神事にも使用されたようです。その事は、エジプト王の墓の壁画に麻を栽培している絵が描かれていることや麻の強度を生かしてミイラを包んでいることからも確認されています。

 またギリシャやローマの貴婦人の間では、上質な純白のリネン(亜麻布)が重宝され、かの絶世の美女クレオパトラも、情熱の夜の火照る肌をやすめたのが、リネンのシーツであったと云われています。

 その後、時を経て中世ヨーロッパに深く根付き発展した「リネン文化」は、製品の品質の高さで世界的な名声を確立し、今日までヨーロッパ伝統社会にその長い歴史を築き上げています。

日本の麻

 日本では、新石器時代から使われていた形跡があります。最古のものでは、福井県の遺跡から縄文早期の麻が。また静岡県登呂では、弥生後期の麻織物が出土されています。

 その後、絹が生産され始めたことにともない、平安貴族の式服は絹ですが、武士階級は一般庶民と同じく、麻が衣服の主な素材として使われていたようです。
 江戸時代になっても、武士の裃や長裃は麻で作られています。また肉体労働をする庶民には、麻の通気性が重要な素材で、日常の生活用品にも巾広く用いられています。

 明治になると、最大の消費者だった武士がいなくなり、また生活の変化にともない急速に衣料用の麻の需要が減っていきます。しかし、日本で麻の産業が始まったのはこの頃だそうです。それは明治維新の立役者の一人榎本武揚が、明治7年(1874年)に公使として赴任していたロシアより、亜麻の種子を北海道開拓使長官 黒田清隆に送り、屯田兵に栽培・試作させたのが始まりと云われているからです。また紡績が始まったのも同20年頃で、ラミー麻の紡績はさらに遅れて大正元年になってからのことです。

 第二次世界大戦までは麻の強度が認知され、軍需産業を中心に活用されていましたが、大戦後は民需産業となり、魚網や靴下など幅広い分野で使われていきます。

 その後、昭和28年のナイロンの出現で生産量は激減しますが、昭和40年代になると高度成長期の波にも乗り、紳士衣料を中心に本麻のブームなどで徐々にシェアを拡大していきます。そして昭和50年代に入るとファッションの素材として一段と注目を浴び、婦人層や若年層にも浸透したことで、現在では市場に定着した素材となっています。

信濃屋における麻

 記憶に残る最も印象的なものは、今でこそドレスシャツの代名詞となっている「FRAY」で、信濃屋が最初に扱った麻の開襟シャツでした。1980年代の初めのことですが、襟の開きのバランスと質感がすばらしく、価格も当時のシャツでは飛びぬけていたのを覚えています。その後80年代後半からは、毎シーズンのイタリア仕入で「FRAY」を扱うようになり、オリジナルネームが付くことになります。

 またスーツでは、現在取り扱いをしていない「St saintandrews」が、「Dario Zaffagni」という当時のオーナー名で製品化されていた、1980年代にオーダーしたアイリッシュリネンのスーツが思い出されます。現在の生地とは比べものにならない麻の重みと肌触りの良さがあり、本来のアイリッシュリネンだったと思われます。

 その後も「Brioni」、「L,BARBERA」をはじめ、数々のファクトリーで麻素材のものをオーダーしてきましたが、最近では、「Cesare Attolini」や「ORIGINAL」を中心にスーツ・ジャケット・シャツなどを作製しています。

文学や映画に出てくる麻

 1719年出版された『ロビンソン・クルーソー』には、漂流した1659年に流されてしまったシャツとベストとは別に亜麻の下着を着用していることが記述されています。
 また『馬で去った女』(1928年刊 D・H・ロレンス著)に出てくる文章には、「リンネルの乗馬服に黒い長靴と帽子、一抹の感傷をそそる赤いネクタイといった姿で……」と書かれていることから、1920年代にリネンのライディング・ジャケットがあったことも伺えます。

 日本では、明治元年(1868年)に『服製年中請負仕様書』と云う本が出ています。 実際には、洋服店の開店案内でカタログみたいなものだったそうですが、その中に「リンネル三揃」と書いてあり、一等から六等までの序列があったようです。因みに一等の金額が百四十円で、この当時の一円を現在の約30,000円位に換算すると恐ろしい金額になりますが、明治の初めにリネンのスリーピースがあったことが、このことから分かります。

 映画においては、仕立屋を舞台にしたサスペンスで『テイラー・オブ・パナマ』(2001年公開 ピアース・ブロスナン主演)にスキャバル社の全面協力で品の良い麻のスーツも登場します。また最近では、レオナルド・ディカプリオ主演の『華麗なるギャッツビー』(2013年公開)が、ブルックス・ブラザースのデザインで、麻のスーツにコンビネーションの靴を合わせています。また女優のドレスはプラダで、ジュエリーはティファニーが協力をしたそうです。

麻素材の知識

 麻は天然素材のなかで最も涼しい繊維と云われ、ヘンプなど世界には数十種類の特徴の異なる麻があります。しかし、衣料用として「麻」と品質表示できるものは、ラミー(Ramie)とリネン(Linen)の2種類となります。

 ラミーは繊維としては、太く長く、天然繊維の中で最もシャリ感があり、白く光沢があります。一方のリネンは、細く短い繊維で絹に近くしなやかで特有の黄色味があります。

 麻の特徴としては、涼しく、衛生的(バクテリアの発生率が低い)で水に濡れると強度が約60%もアップしますが、弾力性に乏しい為、シワになりやすく、摩擦により毛羽立つことから白化もしていきます。またハリと風合いを出す為に撚りを強くかけていることで、縮みや反り返りが起きやすい素材でもあります。

 現在では、一般的に「リネン」で通じますが、昔の日本人は「リンネル」と云ったようで、オランダ語の「リンネン Linnen」を耳で聞いて生まれた言葉だそうです。
 また「リンネン」は、ラテン語の「リニューム Linum」から来ていてオランダ語のみならず、フランス語の「ラン Lin」もイタリア語の「リノ Lino」も同じ由来とのことです。

 近年は、リネンの紡績もイタリアやフランスなどヨーロッパでの生産が難しくなり、南アフリカ・中国・チュニジア・リトアニアに生産拠点を移しています。
 特にアイリッシュリネンは、アイルランドにおいて既に紡績が行われていない事実からしても、中国などの他国で生産された糸を使用していると思われます。今現在流通しているものは、アイルランドで織られたと云う意味でのアイリッシュリネンになります。


参考文献
日本麻紡績協会 ホームページ
湖東繊維工業協同組合 ホームページ「近江の麻」
株式会社 林与 ホームページ
・出石尚三 「紳士服飾研究」 朝日新聞 デジタル&M
・Windsor – Heritege for Gentleman 「ホワイト・リネン」

 

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