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フォーマルウェアの歴史

「フォーマル ウエア (DAY TIME)」

フォーマルの歴史

 フォーマルウエアのお手本になる国と云えば、長い歴史と貴族社会が存在する 英国ではないでしょうか。上流社会で生まれたフォーマルウエアは、マナーと同じように発達し、洗練されていったと思われます。舞踏会やパーティーが、日常の行事である上流社会にとって、その際に何を着てどう振舞うかが、その中で生きる人達には、とても大切なものだったようです。

 日本におけるフォーマルは、明治以前では公家や将軍とその周辺の人達が着用するくらいで、その後1870年代に入り、男性礼装礼服令により少しずつ洋式のフォーマルウエアが着られるようになっていきます。1880年代になると鹿鳴館で、紳士はテールコート(燕尾服)、淑女はローブデコルテの着用が義務付けられ、更に発展していったと云われています。

モーニングコート

 現在、昼間のモスト・フォーマルウエアとして用いられているモーニングコートは、フロックコートが改良され、今のかたちに成ったと云われています。
 中世より長い歴史を持つフロックコートが19世紀に入って、馬車ではなく馬に乗ろうとしたときに丈の長いダブルブレストの裾が邪魔になり、フロントの裾をカットした事で、モーニング・ウオーキングコートが生まれたとされています。

 更に1840年前後には、ニューマーケットコートと呼ばれるようになります。ニューマーケットとは、英国東部の競馬場があることで知られる町で「競馬見物に適した服」と云う意味合いで呼ばれていたと思われます。また1850年代にはカッタウェイコート、60年代になりシューティングコート、70年代に入るとモーニングコートと変遷していったようです。

 かつて日常服として着用されていたフロックコートに代わって、モーニングコートがその役割を担い、やがて20世紀に入り、礼服としての性格を濃くしていき、昼の第一礼装となって今日に至ります。

ディレクターズスーツ

 昼間のセミ・フォーマルであるディレクターズスーツは、20世紀の初め頃から着られるようになったとの事です。それは英国のエドワード7世が、ある昼間の集まりにフロックコートの代用として、黒のラウンジジャケット着用したのが始まりとされているからです。

 型はモーニングのテールをカットしたもので、フロントは一つ、または二つボタンのシングルブレスト ピークドラペル。バックはノーベント、ポケットはスラッシュポケット(両玉縁フラップ無)のシンプルなディテールで仕上げてあります。

 ライトグレイのウエストコート(ベスト)と、グレイ系のコールスラックスを着用するのは変わりませんが、モーニングコートほど大げさでなく、またインフォーマルのダークスーツよりあらたまった装いは、昼間の結婚式やウエディングパーティーに主賓や身内で出席する際、最も適している一着ではないかと思います。

 フォーマルウエアの装いとして、デイタイム(ビフォーシックス)と、イブニング(アフターシックス)に分かれます。 最近は少なくなってきましたが、昼間の結婚式に黒いダブルブレストのスーツに白いネクタイ、靴は金具の付いたスリッポンで出席される方も多かったように思います。そのようなスタイルは日本独特のもので、何故そうなったのかは解りませんが、あまりお薦め出来る事ではないです。何をどのように着たらフォーマルな装いとなるのか、昼間の慶事を例にして基本的な決まり事を確認したいと思います。

モスト・フォーマル
(モーニングコート)
オーバーコート

色は黒かグレイ、又はネイビーのチェスターフィールド
シングル、又はダブルで襟にベルベットを付けることも有る

コート
(ジャケット)

カッタウェイコート(モーニングコート)
一つボタン、ピークドラペル
色はオックスフォードグレイ、又は黒
素材はトロピカルウーステッド、又はウーステッドチェビオット

トラウザース
(スラックス)

色は黒×ライトグレイ、黒×シルバートーンの縞
素材はウーステッド

ウエストコート
(ベスト)

シングル又はダブル
色はコートと共色、ライトグレイ又はホワイト
素材はウーステッド、又はフランネル

シャツ

色は白で堅く仕上げたひだ胸、又はプレーンフロント
カラーも堅く仕上げたウイング、又はプレーン
袖口はフレンチカフ
素材はコットン

ネクタイ

アスコット、又は結び下げのストライプか、細かいチェック
色は黒×シルバー

シューズ

ストレートチップ(一文字飾り)で黒のカーフスキン

ソックス

黒のカーフレングス、又はホーズ
カーフレングスはガーター(ソックスサスペンダー)を使用

ハット

ハイシルク

アクセサリー

パール、又は宝石のタイピン
シルバーかゴールド、又は宝石のカフリンクス
グレイ系のシルクスカーフ

グラブ

グレイ、又はホワイトの布地 (出来ればベストの色と合せる)

セミ・フォーマル
(ディレクターズスーツ)
オーバーコート

色は黒かグレイ、又はネイビーのチェスターフィールド
シングル、又はダブルで襟にベルベットを付けることも有る

コート
(ジャケット)

シングルブレストジャケット
一つ、又は二つボタンのピークドラペル
色はオックスフォードグレイ、又は黒
素材はトロピカルウーステッド、又はウーステッドチェビオット

トラウザース
(スラックス)

色は黒×ライトグレイ、黒×シルバートーンの縞
素材はウーステッド

ウエストコート
(ベスト)

シングル、又はダブル
色はコートと共色でライトグレイ、又はホワイト
素材はウーステッド、又はフランネル

シャツ

色は白で堅く仕上げたひだ胸、又はプレーンフロント
カラーも堅く仕上げたウイング、又はプレーン
袖口はフレンチカフ
素材はコットン

ネクタイ

結び下げのストライプ、又は細かいチェック
色は黒×シルバー

シューズ

ストレートチップ(一文字飾り)で黒のカーフスキン

ソックス

黒のカーフレングス、又はホーズ
カーフレングスはガーター(ソックスサスペンダー)を使用

ハット

ホンブルグ

アクセサリー

パール、又は宝石のタイピン
シルバーかゴールド、又は宝石のカフリンクス
グレイ系のシルクスカーフ

グラブ

グレイ、又はホワイトの布地(出来ればベストの色と合せる)

映画の中における礼服

 映画の中において昼間の礼服を着用した物も多くあると思いますが、印象に残るのは、やはり夜のセミ・フォーマル/タキシードを格好良く着こなしたシーンです。特に1920〜30年代を題材とした映画は、現在の洋服のかたちが確立された時期という事もあり、オーセンティックで基本に忠実なスタイルがとても参考になります。

 1973年公開の『スティング』、1984年公開の『ワンスアポンナタイム イン アメリカ』と『コットンクラブ』はお薦めの三作品です。スーツやジャケットを着用したシーンも素敵ですが、アフターシックスになり、髪を整え、タキシードであらたまった装いは、エレガントで優雅な雰囲気に満ちています。近年の日本ではその様な場は少なくなっていますが、年に一度くらいは着用したいものですね。

 


参考文献
・メンズクラブ ブックス7 フォーマルウエア
・SHINANOYA FORMAL ATTIRE
・エスカイア版20世紀メンズ・ファッション百科事典

 

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