「ボタン (BUTTON)」
ボタンの起源
ボタンの歴史をひも解いてみると、木の実や動物の骨といった天然素材を使ったものが最初とされているようです。 古代ヨーロッパでも、ゆったりとした布を纏うギリシャやローマ世界では発生せず、より寒冷な北部ゲルマン世界の衣装文化地域で普及していったと考えられます。 その後ヨーロッパ服飾文化の発展と共に、ボタンも少しずつ現在使われている型に変化していきます。
ボタンの種類
スーツやジャケットに使われるボタンは、主にナット(コロッツォ)、水牛、蝶貝やメタル釦等がありますが、オーダー用の付属品サンプルを見ると、天然素材に似せたプラスティック製の物を多く見かけます。出来れば拘りを持って作られるオーダー品には、時間が経っても味わいが出てくるようなボタンをお選び頂ければと思っています。
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ナット釦
ナット釦は、南米産のヤシの実であるダグアナッツ(コロッツォ)を材料として作られています。 ベジタブルアイボリーと呼ばれ、19世紀中頃から20世紀の中頃までの約100年間は、一般的な紳士服用として多く使われましたが、その後プラスティックの普及と共に需要も少なくなっていきます。
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本水牛釦
本水牛釦は、アジアやヨーロッパ産の水牛の角や骨を加工して作られたものになり、アイボリーからダークブラウンにかけての自然な色と柄が特徴です。ナット釦同様、紳士服に用いられていますが、特に透明度のあるアイボリーは、骨の部分を使って作られているので希少価値があると云われています。
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メタル釦
軍服やブレザーに使用するメタル釦は、エンブレム(ブレザーバッジ)と同様に、地位の象徴としての意味合いが強かったと云われています。18世紀後半にイギリスで機械による加工技術が開発され、メタル釦の需要が増えていきますが、当時はまだ真鍮(ブラス)素材は無く、鉄製が主流だったと思われます。 19世紀にはイギリスから世界中に広まり、軍服が略式礼装に制定され、制服のデザインには欠かせない存在になっていきます。その後、一般のブレザーやユニフォームの胸元を飾るアイテムとして、重要な役割を担うようになっていきます。
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シェル釦
夏物のブレザーをより引き立たせる釦と云えば、白蝶貝ではないかと思います。ナットやメタルに無い清涼感は独特なもので、高瀬貝等とは違った透明感がある光沢は、見る人にも爽やかな印象を与えます。 欧米では「マザーオブパール」と呼ばれ、古くから高級な釦やフォーク、ナイフの柄などの材料にも使われています。現在でも、ドレスシャツや時計の文字盤等に多く使われ、貝釦としては最高のものとされています。 |
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カフリンクス
上流社会の紳士の間で、金や銀を使った釦を鎖でつなぎ、シャツの袖口を留める為に作られたのがカフリンクスの始まりで、現在の形になったのは、18世紀の終わり頃とされています。また17世紀のフランスでは、袖の装飾としてレースやリボンがカフリンクスに近い使い方をされていたようです。 その後の産業革命で大量生産が可能になり、広く一般に普及されていきます。
ドレスシャツには欠かせないアイテムとなったカフリンクスは、古典的なチェーン式を含め、約8種類の形状の物があります。1960年代に入ると袖ボタン付き(シングルカフ)のドレスシャツが市場に出回るようになり、カフリンクスを使う方が急激に少なくなっていったようです。
なお一説には、古代エジプト時代にカフリンクスの原型が存在していて、ヒエログリフ(古代エジプトの象形文字)にも描かれているという話もあります。
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脇役の大切さ
映画やドラマでもそうですが、紳士服を着こなす上で重要な点は、主役の周りを固める脇役達ではないでしょうか。スーツやジャケットをオーダーした場合、素材や型の良し悪しも大事な要素ですが、釦を含む付属品のコーディネイトがアンバランスだと、素晴らしい生地を使ったとしても台無しになってしまいます。また洋服が完成し着用する時には、脇役であるネクタイやシャツ、アクセサリーのコーディネイトを大切にする事で、素晴らしい着こなしになります。
以前、ルチアーノ・バルベラ氏が語っていた事ですが、「スーツ一着に対してシャツ5枚、ネクタイ10本位あれば、それ程メインとなるスーツを沢山所有していなくても、色々な着こなしが楽しめる。またお会いする方にも、同じスーツを着ているという印象を与える事なく、自分らしいスタイルが確立出来る。」と云っていたのを思い出します。ひとつのアイテムに拘らず、全体のバランスを視る事が大切だと感じます。
参考文献
・メンズクラブ ブックス3 ブレザー
・Wikipedia
・TOMA Collection
・東和プラムホームページ
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