ブルゾン(Blouson)
ブルゾンの歴史
現代ブルゾンの原型となったのは、1937年創業の英国レインウェアブランド「BARACUTA」の「G9モデル」だと云われています。創業者のミラー兄弟が、マンチェスター郊外で英国陸軍の支給用ジャンパーをベースに、防風・防水の加工を施し、ゴルフ用に製作したことから「Golf Jacket」とも呼ばれたようです。
「G9」とは、ゴルフの頭文字Gと、9番目の試作品であることから命名され、欧米では「ハリントン・ジャケット」の愛称で親しまれています。これは1964〜1969年に、アメリカで放送されていた大人気TVドラマ『ペイトン・プレイス物語』で、俳優のライアン・オニール演じるロドニー・ハリントンが着用していたことに由来しているそうです。
またバラクータ社の「G9」や、マグレガー社のドリズラー・タイプのアウターを、日本では和製英語の「スウィング・トップ」と呼びますが、これはファッションブランド「VAN」の石津謙介氏による、ゴルフスウィングから付けられた名前と云われます。
現在のブルゾンに使用される素材や、細部のデザインは様々に変化していますが、その基本形状は変ることなく続いています。
スターが愛用したバラクータ
「G9」は多くのセレブリティに愛用され、映画では1966年の『クィーン・メリー号の襲撃』でフランク・シナトラが、1968年には『華麗なる賭け』のスティーブ・マクイーンが、その他にもグレゴリー・ペックやエルビス・プレスリーなど、時代を代表するスターが着用して話題となります。
また1970年にはゴルフのアーノルド・パーマー特別仕様が、1977年には歌手のデビット・ボウイがツアーで着用したことで、その人気を不動のものとします。そして日本では俳優の高倉健さんが、ドラマや日常に愛用したことで人気が広がります。
スタジャンの発祥
もうひとつのジャンパーと云うと「スタジャン」で、その歴史は意外と長いものです。原型はアメリカのエリート大学のユニホームで、今から約125年以上前に生まれた「スタジアム・ジャンパー」を略した和製英語です。
アメリカでは「ヴァーシティー・ジャケット」と云い、IVYリーグ(アメリカ東部の名門私立大学8校)で、「母校のイニシャルを付けることが許された運動選手」が着るプレステージを表すジャケットのことだったようです。
また「レターマン・ジャケット」とも云い、その流れをつくったのが19世紀のハーバード大学なので、アイビー・ルックが生まれる前から「スタジャン」の原型があったことも分かります。
その後、一般の人々も着るようになり、商業的にはメジャーリーグのチーム・ロゴやマスコットが付いたものを着て、市民が応援する「スタジャン」が登場します。また野球だけでなく、バスケットボールやアメリカン・フットボールなど、その他のスポーツにも広がっていきます。
日本のIVYブームにも、欠かせないアイテムのひとつとして1960年代には存在しますが、それ以降の「スタジャン」はストーリート・ファッションのイメージが強くなり、当時のような「スタジャン」は影を潜めていきます。
ミラノ・クラシック(釦留めブルゾン)
フロント・ジップのブルゾンが多いなかで、釦留めのクラシックなブルゾンがあります。特に革素材のものがイタリアなどヨーロッパでは重宝され、オリジナル・ブランドで取り扱っているショップも多いようです。
信濃屋でも1980年の初め頃からイタリアの「Schiatti」を、1980年代後半以降は「Salfra」、「La matta」、「ENRICO MANDELLI」、「Valstar」など数々の革やコートのファクトリーで作らせています。当初は革の両面をなめし、表裏の色を指定したスウェードとのリバーシブルで、軽さと素材の良さが際立っています。
近年はフォクトリーも手の込んだことをしなくなり、素材も以前のような良さが失われていると思います。また輸出するほどの生産力がなく、当店で扱っていたものも、日本では購入し難くなっているのが現状です。
参考文献
・スタイル社 『エスカイア版20世紀メンズ・ファッション百科辞典』(日本語版)
・Fashionsnap.com 『ブランドファッション通信』
・JOOYホームページ 『スウィングトップの王者バラクータ』
・高木 啓仁氏ブログ『「MILANO CLASSIC – ひと日記』
・婦人画報社 『TAKE IVY』
・ブログ『天神山メンズスタイル』
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